原稿料が支払われない…メールが途絶えた日と未払い確定までのリアル(第3回)

フリーランスの自衛術

第2回では、
「違和感 → 兆候 → 危機感 → 確信」
へと変わっていく過程を振り返りました。

この原稿料未払いは、フリーランス法(2024年11月施行)より前に起きたものです。
いまのような明確にフリーランスを対象とする法律がない中で、
どのように判断し、どんな行動を選んだのか——。

そして今回は、
実際にどんなメールが届き、どんな電話をし、
そのたびにどんな心理状態になっていったのか。

未払いを確信するまでの“リアルな流れ”を、より具体的に記していきます。

👉同じ時期の出来事を、心の動き(第2回)と具体的なやり取り(第3回)という異なる視点でまとめています。
前回の記事はこちら👇

原稿料が支払われない… フリーランスが実際に遭遇した未払いトラブルの経緯(第2回)
フリーランスとして仕事をしていると、「これって大丈夫なのかな」と胸の奥に小さな不安が生まれる瞬間が多々あります。相談する上司も同僚もいない。そのときどきで、すべて自分で判断しなければならない。原稿料の未払いに直面したとき、私はその自己判断の...


第1回はこちら👇

原稿料が支払われない…フリーランスが実際に遭遇した未払いトラブルの経緯(第1回)
フリーランスとして受注した記事制作で、原稿料の一部が未払いとなった実録です。受注時に見逃していたサインや、契約書がなかった背景、企業とフリーランスの立場の違いについて具体的に記録しています。

支払担当者から届いた“違和感だらけの原稿料メール”

シリーズの原稿料をまとめて請求したあと、返信を待っていると、
これまでやり取りしていた編集者ではなく、
別の人物——打ち合わせで顔を合わせたことのある「支払担当者」からメールが届きました。

内容は、驚くほど事務的なものでした。

│「請求書はこちらに送ってください」

シリーズを書かせてもらったお礼を添えて請求書を送付すると、
返ってきたのは、さらに違和感のある文面でした。

│「支払は●月〜●月の●回分でしょうか? とりあえず一回分をお支払いします」

すでに全回の原稿が納品され、掲載も終わっている段階。
本来ならまとめて全額を支払うべき時期です。

それにもかかわらず「とりあえず一回分」。
しかも“●回分”という認識自体が少し違っている。

この瞬間、
「支払いに対してかなりルーズな会社だ」
という不信感が一気にわきあがりました。

原稿料の支払い認識のズレを指摘したメール

この返信に、これまでの滞りへの不満がこみあげ、
こちらも事務的な文面で返すことにしました。

「正確には、すでに納品済みで、貴社の『●●』に掲載されております
『●●●』の●〜●回の●回分です。」

上記を添えたメールを送ったあと、
返信はないまま“1回分だけ”振り込まれました。

しかし、その後は2カ月以上、完全に沈黙。

この時点で私は「これは未払いだ」と確信しましたが、
同時にひとつ気になっていたことがありました。

私のケースはフリーランス法(2024年施行)ができる前の出来事。
フリーランス法が施行される前でも、これは違反になるのだろうか?

フリーランス法(2024年施行)以前にも存在した“未払いを禁じるルール”

実は、フリーランス法ができる以前から、
フリーランスの取引には 民法・商法・下請法の思想 をもとにした
「フリーランス取引適正化ガイドライン」が存在していました。

ガイドラインとは、国がフリーランス取引の適正化のために示した指針で、
法律の根拠(民法・商法・下請法)を整理したものです。
フリーランス取引適正化ガイドライン(厚労省・2021年/PDF)

このガイドラインでは、

  • 不当な支払遅延
  • 一方的な減額
  • 説明のない放置

といった行為は、
優越的地位の乱用にあたる可能性があると明記されています。
また、その根拠として民法・商法・下請法なども併記されていました。

つまり、
フリーランス法施行前であっても、未払いや支払い遅延は明確な“ルール違反”だった のです。
原稿料の支払い義務や支払期日については、当時すでに民法・商法・下請法といった
“指標となる法律”が存在していたからです。

こうした背景を確認したうえで、
私は未払いを明確に伝えるメールを送る決断をしました。

原稿料の未払いを明確に伝えるために送ったメール

意図は3つ。

  • 未払いであることを事実として伝える
  • それがルール違反であることを明確にする
  • こちらは“なし崩しにはしない”という姿勢を示す

実際に送った文面の一部は、次のようなものでした。

もし行き違いがありましたら申し訳ございませんが、
原稿料の未払い分についてご連絡いたします。

貴社に納品済みの原稿「●●●」の
【4回●●】xxxx年x月x日納品 11月25日「●●●」掲載
【5回●●】xxxx年x月x日納品 1月10日「●●●」掲載
【6回●●】xxxx年x月x日納品 2月14日「●●●」掲載
につきまして、原稿料を未だお支払いいただいておりません。

再度、商法第512条に基づき、請求させていただきます。

一般常識上、納品・請求書発行の翌月末までには
報酬が支払われるものと認識しておりますし、
「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」でも
報酬は60日以内に支払われるものと定められていますので、少々困惑しております。

つきましては、貴社にてお支払いのご確認をいただきますとともに、
もしお支払いが完了していない場合は、上記3回分の原稿料を
x月末日までに早急にお振込みいただきますよう、お願い申し上げます。

電話での追及と、届かなかった説明書類(支払い遅延の実態)

メールが途絶えたまま、さらに一カ月が過ぎました。

私はすでに「少額訴訟」について調べ始めていて、
“動かないなら訴訟に進む”
という覚悟が少しずつ固まりつつありました。

そこで思い切って電話をしてみることに。

電話は意外にもすぐにつながりました。
しかし、相手の言い訳は、到底納得できるものではありませんでした。

「払えない」

私への原稿料は、倒産レベルの金額ではありません。
絶句していると、
相手は、「関係各社に支払いが遅れている理由について説明する書類がある。それを送ります」と。

万が一ではあるけれど、倒産前日とか?
そこで、とりあえず書類を送ってもらうことにしました。
しかし、その書類さえ、届かなかったのです。

心理面に寄せた“最終通告メール”を送る決断

ここまで来ると私は、
「やれることはすべてやってみる」
という気持ちになっていました。

そこで、これまでの経緯と損害、
そして法的手段の可能性を冷静に伝えるメールを送りました。

お世話になっております。

x月、原稿料未支払いについて電話連絡をさせていただきましたが、
その後どういった状況でしょうか。

御社が現在支払できる状況ではないというお話で、
そういう状況を記した書類をご送付いただけるとのことでしたが、
未だ受け取っておりません。

私としましては、御社からの依頼で、ご提示いただいた報酬、
仕事内容に見合うだけの成果物を納品するために他の業務との調整をつけ、
業務時間を確保し、納品させていただきました。

ご提示いただいた報酬、仕事内容に対し、それに見合った成果物を納品し、
またそれを御社は受け取り、ホームページに掲載しております。

にもかかわらず、その報酬をお支払いいただけず、
数カ月間このようなご連絡に時間をかけなければならないのは、
私のようなフリーランスにとってはたいへんな損害です。

すみやかに、以下の未支払いの原稿料をお支払いください。

ー省略ー

また、x月以降、何らご説明も相応の理由もなく、
原稿料未支払いの状況が続くようでしたら、
損害賠償を含めた法的手段をとらせていただきます。

このメールにも、しばらく返信はありませんでした。

届いた“減額依頼の書類”と、限界を迎えた瞬間

数日後、ようやく書類が届きました。

しかしそれは、

  • 社名なし
  • 署名なし
  • 法律のルールに沿っていない
  • 一方的な減額依頼

という、驚くほど杜撰なものでした。

この瞬間、
私の中で限界が訪れました。

そこで、次のように短く返信しました。

書類を受け取りました。
弁護士に相談のうえ、法に照らして適正と思われる対応をとらせていただきます。

するとその日のうちに返信がありました。

|少しずつお支払いします。今月末までに1回分振込みします。

しかし、私はもうこの言葉を信用できませんでした。

フリーランス100当番に相談し、少額訴訟を決意するまで

訴訟を調べる過程で、
国の無料相談窓口「フリーランス100当番」の存在を知りました。

ここでは無料で相談でき、
状況によっては「和解」まで仲介してくれます。

私はこれまでの経緯をまとめてメールで相談しました。

返答は次のようなものでした。

  • 支払ってもらう方法は「専門家に依頼」か「本人対応」。
    ただし、専門家に依頼すると高額の料金がかかる。
  • 本人対応の場合は「第三者を交えた話し合い」か「裁判手続」
  • 今回のケースでは、話し合いに応じる見込みは低い

メール、電話、専門家への相談。
できることはすべてやりました。

そのうえで私は、
「少額訴訟しかない」
と決心しました。

内容証明を送るまでに必要だった“時間”の正体

メール連絡が途絶えてから内容証明を送るまでに約5カ月。
そして、内容証明を送ってから少額訴訟を決意するまでに約1年。

この時間は、
手続きに時間がかかったのではなく、
“心の整理”に時間が必要だったから。

  • どこまでやるのか
  • どこで線を引くのか
  • 自分の信念をどう守るのか
  • 法的手段に進む覚悟があるのか

これらを整理するには、どうしても時間がかかる。

それは弱さではなく、
誠実に向き合った証拠だと、いまは思います。

足踏みするときもある、でも前へ

ここまでが、
未払いが確定してから、内容証明を送るまでの実録の全体像です。

次回(有料記事)では、
実際に私が行った

  • 内容証明の作り方
  • 注意点
  • 郵便局での流れ
  • 証拠のまとめ方
  • 少額訴訟の準備
  • 訴状の書き方(実録)

といった“実務の流れ”を、詳しくまとめていこうと思います。

少額訴訟の準備を進める今でも、やはり足踏みするときもありますが、
ここに書きながら、少しずつでも前へ進んでいこうと思います。

もし、同じ状況で悩んでいる方がいれば、
・証拠の整理
・メールでの事実確認
・ガイドラインの確認
・相談窓口の利用
を早めに行うことをおすすめします。後々の役に立つし、心の整理にもつながります。

今回の未払いケースについては、
時系列とは別に、全体像をまとめた記事も書いています。
流れを俯瞰して知りたい方はこちらをどうぞ。

原稿料が支払われなかった話と、いま私が進めていること
原稿料不払いの実録と、少額訴訟の準備までの道のり。フリーランスが泣き寝入りしないために知っておきたい視点と、私自身の経験をまとめました。

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