これは、私がフリーランスとして経験した「未払いトラブル」の実録です。
ことの経緯を記すと、記事制作を受注し、
納品した記事はWebサイトに掲載されたが、
報酬の一部が未払いのまま、という状況です。
金額は決して高くはありません。
それでも私は少額訴訟に踏み切りました。
時間もお金も使いましたが、
「ここから先は許せない」と感じる一線を超えていたためです。
フリーランスとしてやっていくには、自分なりの基準が必要です。
基準がなければ、なし崩しにされてしまうからです。
あと、私は「フリーランスはこう扱っていいんだ」という一例には、
決してなりたくありませんでした。
本記事では、受注時~制作のプロセスで見逃してしまった
”未払いの最初のサイン”について書いています。
▶ 第2回はこちら:原稿料未払いの“兆候”に気づいた話(第2回)
フリーランス原稿料の未払いトラブル:受注時に見逃したサイン
あるサイト立ち上げの企画でライター募集に対して反応し、
対面での打ち合わせから、この案件は始まりました。
面談では、紙媒体での編集者としての経験やサンプル記事に興味をもってくれ、
ライターとして常駐してくれないかという提案もされたくらいでした。
依頼内容はとても大まかで、提示されたのは一単語で表せるような大きなテーマだけ。
新規サイトの立ち上げということもあり、方向性や戦略はまだ固まっていないようでしたが、
「目玉になる記事がほしい」という期待だけは強く伝わってきました。
普通なら不安になる丸投げの依頼でしたが、私はそこに魅力を感じていました。
企画から構成、取材の方向性まで、自分の裁量で決められる余地があると感じたからです。
紙媒体での経験が長く、ウェブでの経験はまだ浅かった私は、
Webメディアで編集的な仕事も含めて挑戦できることにワクワクしていました。
提示されたワードから構想が広がり、打ち合わせ中には、
もう頭のなかでは“やりたい”と思える企画にまで育っていたほどです。
受注時に感じた小さな“ズレ”
受注時に一つだけ引っかかったのは、
「支払担当者」から対面ヒアリングで提示された報酬がとても低かったこと。
編集者もとりなしてくれましたが、正直に「それでは無理です」と伝えました。
数日後、正式な依頼の連絡があり、
「このサイトにずっと残す記事を書いてほしいので、この報酬にしました」 と、
あの場での提示額とはまったく違う、市場並みの金額が提示されました。
編集者が私の意見に賛同してくれていたことを思い出し、安心した気持ちにもなりました。
こうして私は、この仕事を正式に受けることにしました。
面談を経て決まった仕事が、まさか後に未払いトラブルになるとは思っていませんでした。
制作は順調で、編集者との関係も良好。
「やりがいのある仕事を任せてもらえた」という前向きな気持ちのほうが大きかったのです。
未払いの“最初のサイン”=契約書がなかったこと

しかし後から振り返ると、
未払いの“最初のサイン”は受注時にすでにあったのだと気づきました。
それは、契約書がなかったことです。
業務範囲も報酬も、口頭とメールのやり取りだけで進んでいました。
これは単なる手続きの問題ではなく、
相手の「フリーランスとの向き合い方」が表れていたのかもしれません。
もし相手がフリーランスを対等なパートナーとして扱う文化を持っていたなら、
最初の段階で契約書を作成し、条件を明確にしていたはずです。
そうしなかったのは、悪意というよりも、
フリーランスに対する“無関心さ”や“無責任さ”に近いものだったのかもしれません。
曖昧な発注を繰り返してきたのか、
あるいは「契約書がなくてもなんとかなる」という慣習が社内にあったのか。
いま思えば、そうした“曖昧さを許す体質”が、未払いという結果につながった可能性があります。
そのサインを見逃した理由=仕事が順調で、前向きだったこと
そしてその「サイン」を見逃した理由。
それは、本来なら前向きなことなのですが、
制作が順調に進み、編集者とのやり取りもとてもスムーズだったことです。
仕事が楽しく、前向きな気持ちで取り組んでいた分、
金銭面の違和感に目を向ける余裕がなくなっていました。
契約書がなかったから未払いになった、という単純な話ではありません。
ただ、契約書があれば、相手の姿勢や価値観にもっと早く気づけたのかもしれない。
その気づきを得られなかったことが、結果的にトラブルの芽になったように感じています。
契約書がないまま仕事が進むと、今回のようにトラブルが生まれやすくなります。
契約書がなくても泣き寝入りしないための基本的な考え方は、こちらの記事でまとめています。
フリーランスであることと企業に属することのちがい
このように書き起こしてみると、今あらためて強く感じるのは、
企業に属しているということと、フリーランスとして働くことの“立場の違い”です。
担当編集者との関係性が良好でも、報酬を支払う会社との関係性は別物。
編集やライティングの現場では価値観を共有し合い、
和気あいあいと進むことも多いのですが、
金銭のやり取りはその楽しさとは切り離して考えなければいけない。
かつて会社員として編集の仕事をしていたころ、
フリーランスの方々と過ごした時間は楽しく、刺激に満ちていました。
けれど今振り返ると、その裏側には
“企業とフリーランスの非対称性”が確かに存在していたのだと思います。
若かった私は、その非対称性に気づいていながら、
深く考えずにやり過ごしていたのかもしれません。
だからこそ、会社としての態度を明らかにする契約書は、
フリーランスにとって“相手の姿勢を可視化する唯一の手段”なのだと痛感しました。
次の記事では、実際に“未払いの兆候”が表れ、
その違和感がどのように危機感へと変わっていったのかを書いていきます。




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